営業とは、物売りではなく自分の売り込み
実は私、16歳のときにヤクルトの営業をやっていました。
今思うと「よくやったな…」という経験ですが、当時は右も左も分からないまま、とにかく必死でした。
ヤクルトへ入社したきっかけ
当時は「集団就職」という言葉がまだ普通にありました。
そんな中、ある日突然、中年の紳士が私のところにやってきて「東京で働かないか?」と声をかけてきたんです。
正直、「なんで自分に?」という感じでしたが、話を聞いてみると条件がすごい。
「行きは飛行機で行きますよ」
これに完全にやられました(笑)
私は飛行機なんて乗ったこともなかったので、それだけで気持ちは一気に東京へ。
母と相談して、「高校は休学しても東京で続けられる」という話もあり、「これはチャンスだ」と思いました。
何より「東京で働く」という響きに憧れていましたね。
上京して始まった営業生活
住まいは上野毛の寮。
通勤は毎日マイクロバスで送迎付き。
もう当時の私からすれば「すごい世界に来たな」という感じでした。
勤務先は、東京都品川区北馬場にある第一ヤクルト。
現在は影も形もなくなっています。
ここがまたすごくて、後にヤクルトの宅配システム、いわゆる「ヤクルトおばさん」の仕組みを作った第一人者がいる会社だったんです。
ヤクルトのうんちくを覚えなければならない。
アシドフィルスシロタ株が人間の体にどう働くのか?
ビタミンB1・B2・B6・B12がなんたらかんたら・・・それらを丸暗記!
そしてそれをどのように説明して、どう愛飲者として登録してくれるか?
それは自身のスキルを磨き上げるしかない。
16歳、飛び込み営業スタート

私の仕事はシンプル。
ヤクルトを定期的に頼んでくれる家庭を増やすこと。
つまり、新規開拓の訪問営業です。
ヤクルトおばさんも人それぞれ!
どんどん宅配先を増やす人もいれば、ほとんど普及活動せずに減らしていく人もいるのです。
そんな減らす人の地域に営業に入って増やしてあげることもありした。
毎日、30mlのサンプル瓶を50本持って、ひたすら一軒一軒回る。
やり方は「向こう三軒両隣」。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。
とにかく歩いて、ピンポン押して、説明して、配る。
子どもがまず出てくればラッキー!
まずサンプルをさっと開けて飲ます。
これで、お母さんは説明を聞くしかなくなる。
これを延々と繰り返します。
当時の時代背景
ヤクルトの30mlが確か30円で50mlが50~60円、つまり1ヶ月契約でヤクルトを取ると900円~1500円くらいでした。
こどもが複数人いると1本だけとはいかず複数本契約が取れました。
この頃は、ライバル企業もあって雪印のカツゲンやヨーグルトンなどというのがありました。
現在のようにプラスチックではなく、殆どが瓶で当然リサイクル。
宅配のおばさんたちは、配達し空き瓶を回収してくるという活動をしていました。ECOだったんですね。
1日の流れがなかなかハード
朝はグループごとに分かれてマイクロバスで現地へ。
第一ヤクルトのテリトリーは品川区と目黒区。目黒区の定番の送られて集合場所は、大鳥神社でしたね。
朝10時に指定エリアに降ろされて、そこからは完全に自由行動(という名の営業スタート)。
夕方5時に集合場所へ戻るまで、ずっと営業です。
お昼は、お金もなく周りにお店があることは少ないのでパン屋などを見つけたら買っておく。
飲み物はもちろんサンプルのヤクルト。
朝は氷をかけてスタートしますが、昼ころには殆ど溶けて生ぬるい、酸っぱい。
サンプルがなくなれば、補充しに戻る。
また歩く。
とにかく歩く。
今思えば、よくあんなに歩いていたなと思います。
契約は、ほんとに簡素な申し込み用紙に何月から宅配開始で小(30ml)大(50ml)本数、住所、名前、ハンコです。
1日歩き回って、私は10件から20件。本数で15本から30本。
成績発表で3位以下になったことはありませんでした。
ちょっと自慢!
何と言っても辛いのは、途中から雨が降ったり夏の暑さでしたね。
夏はサンプルが早く温度が上昇し、まずくなるからです。
生ぬるいヤクルト。考えただけで美味しそうじゃないですよね。
なので、冷たくて美味しい内に飲ませて契約に結びつけないとならないからです。
途中から雨が降ると当然傘はない。軒下で雨宿りしながら営業。
雨が降ったからと行って早く迎えが来るわけではない。
心が折れそうになります。
毎日ある「成績発表」というプレッシャー

そして地味にキツかったのがこれ。
毎朝の成績発表。
社員全員の前で、「誰がどれだけ契約を取ったか」が発表されるんです。
それも専務直々に発表営業のグラフもしました。
営業員数は、確か15名ほど。
位置も1位は、50代くらいのおじいちゃんと呼んでいました。
この道30年、どの地区へ行っても「あの家は」「この家は」前に愛飲宅だったと、ほとんど地の利があり、声掛けだけで成約という人で、このおじいちゃんだけは、中々だしぬけませんでした。
もう一人がちょっとキザな着替えるとベストを着けたスリーピースのスーツになる20代後半の今で言うイケメンの先輩。
営業がうまい、ついていくと立て板に水の営業トーク。この人と2位の座を奪い合い。
従って2位と3位、たま~に1位。
16歳の自分には、なかなかのプレッシャーでした。
でも、その分「負けたくない」という気持ちも芽生えてきて、少しずつ営業というものに向き合うようになっていきました。
毎朝唱和していた言葉
成績発表のあとに、毎朝みんなで唱和していたものがあります。
いわゆる「心訓」です。
内容はこんな感じです。
・一生を貫く仕事を持つことが一番立派
・教養がないことが一番みじめ
・仕事がないことが一番さびしい
・人をうらやむのが一番みにくい
・人に奉仕することが尊い
・すべてに愛情を持つことが美しい
・嘘をつくことが一番悲しい
これは福沢諭吉の言葉と言われていますが、実際は作者不詳だそうです。
ただ、誰が書いたかよりも、「内容」が本当に大事だと今でも思っています。
これは、見て唱和ではなく、ほとんど暗記させられていました。
16歳の自分が学んだこと

正直、当時はキツかったです。
・暑い日も寒い日も歩き続ける
・断られるのが当たり前
・結果が出ないと評価されない
でも、この経験で分かったことがあります。
それは、
「仕事は待っていても来ない、自分から取りに行くもの」
ということです。
そしてもう一つ。
「継続しないと何も残らない」
これは、後のブログ失敗ともつながる、大事な教訓になりました。
50代のトップ営業に勝てなかった理由
営業部に、50代の先輩がいました。
その人は、常に1位。
正直、別格でした。
たまに“運よく”勝てることはあっても、
連続で1位を取ることは一度もできなかった。
「何が違うんだろう…?」
そう思った私は、ある日、その先輩に同行させてもらうことにしました。
営業トークはほぼゼロだった
正直、私はこう思っていました。
「きっと、すごい営業トークを持っているんだろう」と。
ですが、実際は真逆でした。
立て板に水のような営業トークどころか、
いわゆる“営業らしい言葉”は、ほとんど出てこなかったのです。
代わりに出てきたのは——
「奥さん、久しぶりですね」
ただ、それだけ。
すでに“関係性”ができていた
そこで気づきました。
その先輩は、担当エリアのほとんどの家庭と、
すでに“顔見知り”だったのです。
過去に訪問して、会話をして、
少しずつ関係を積み上げてきた結果——
営業をする前に、信頼ができていた。
だから、お客様の反応も自然でした。
「そうね、じゃあ来月からお願いしようかしら」
たったこれだけで、契約が決まる。
これは勝てないと思った瞬間
その光景を見たとき、正直に思いました。
「これは勝てないな…」
トークの上手さでも、テクニックでもない。
“積み上げてきた信頼の量”が違いすぎたのです。
営業は“話す力”ではなく“関係性”だった
この経験で、私の営業に対する考え方は変わりました。
営業で本当に大事なのは、
その場のトーク力ではなく——
どれだけ関係性を作ってきたか
この一点に尽きると気づいたのです。
まとめ|すべての原点はここだった
今振り返ると、このヤクルト時代が自分の原点だったと思います。
営業の基本
継続する大切さ
メンタルの強さ
全部ここで叩き込まれました。
当時はただ必死でしたが、今こうして振り返ると、「あの経験があってよかった」と思えます。
追伸
営業マンのイメージと現実のズレ
営業マンというと——
・製品に詳しい
・トークが滑らか
・話題が豊富
・説得がうまい
そんなイメージを持つ人が多いと思います。
ですが、現場で結果を出している人は違いました。
営業の本質は“話すこと”ではない
真実はシンプルです。
どれだけ相手の悩みを理解し、解決に導けるか。
これがすべてでした。
立て板に水の営業トークは、確かに気持ちいい。
話している本人も「できる営業マンになった気」がします。
ですが、それは——
自己満足であり、優越感の押し売りにすぎません。
相手の心には、ほとんど刺さらないのです。
●営業で結果を出すための実践ステップ
ここからは、誰でも再現できる形に落とします。
●STEP1|事前に「悩みの仮説」を持つ
いきなり訪問しても、深い話にはなりません。
●STEP2|会話の入口は“売り込み禁止”
いきなり商品説明はNGです。
●STEP3|悩みを“深掘る質問”をする
表面的な会話で終わらせない。
●STEP4|解決策として提案する
ここで初めて商品を出します。
●STEP5|関係を継続する
一回で終わらせないこと。
●営業は“積み上げ型の仕事”である
結局のところ、営業とは——信頼の積み上げゲームです。


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