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17社転職してわかった続く仕事・続かない仕事の違い——倉庫の机から這い上がった69ヶ月の記録

私の転職・仕事遍歴
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17社転職してわかった続く仕事・続かない仕事の違い

隣の事務所から見ていた社長

ヘッドハンティングの真相

OA機器営業をしていた頃、事務所が隣同士だった会社の社長に声をかけられた。穏やかな人柄で、人の良さが滲み出るような方だった。後から聞けば、隣で働く私の様子をずっと見ていたという。

声をかけられた内容は単純なヘッドハンティングではなかった。

「自分の会社は富士通の下請けで電話交換機の保守をやっている。最近雇い入れた社員の様子がおかしい。中に入って調べてもらいたい」

つまり社内調査の依頼だった。営業として雇いながら、まず問題社員を調べてほしいという。

普通なら断るかもしれない。しかし私はやってやろうという気持ちになった。この社長のためなら動けると思った。


横領社員を追って北九州まで——入社前から始まった戦い

調べ始めるとすぐに異変がわかった。商品が売れていないのに仕入れが増えている。

どこに消えているのか追ったところ、質屋に売っていた。さらに倉庫には将来また質屋に入れるつもりなのか、在庫が積み上がっていた。

証拠を押さえた。質屋で預かり証のコピーを取り、社長に見せた。

社長は激怒した。当然だ。弁償させようと問い詰めたが、そもそもお金がないから横領を始めた人間に弁済などできるはずがない。

その社員と奥さんは夜逃げした。行き先は北九州市の母親の家だった。私は追いかけた。

そこで約束手形を切らせ、社長に渡した。
「ない袖は振れませんからね」とお伝えした上で。

社長は深く感謝してくれた。
そして言った。「何とかこの会社で営業を続けてもらいたい。あなたしかいないのだから」
——この一言が、その後69ヶ月を支え続けた言葉になった。


倉庫の机、返事のない挨拶——技術者集団の中の孤独

しかし入社してみると、壁が待っていた。

会社は富士通の下請けという技術者集団だ。
社長は営業を強化したかったが、現場の技術者たちは営業職を異物のように扱った。

前任者が横領という前科を作ったのだから、無理もない部分もある。

私の机は材料置き場のドアの横、窓際に一つだけ置かれた。後ろには古い電線や引き取ってきた電話機、工具類が積み上がっている。

事実上の倉庫だった。

朝「おはようございます」と声をかけても、返事はない。かろうじて軽く頭を下げる程度。電話は1台だけ。それが私の職場だった。

それでも辞めようとは思わなかった。
社長の「あなたしかいないのだから」という言葉と、横領在庫を全部売り切るまでは、終われないという意地があったからだ。


電話帳から始めた営業——広告営業の経験が武器になった

問題は営業の方法だった。

それまで広告営業をやっていた私にとって、OA機器営業は全くの畑違いだった。

まず商品を知らなければ話にならない。社長に頼んで親会社の営業を紹介してもらい、ショールームで1日かけて商品の機能と価格をすべて叩き込んだ。

次はどこに売るかだ。試行錯誤の末に思いついたのが電話帳だった。

電話帳には広告が載っている。大きく広告を出している会社は広告費に余裕がある
——これは広告営業時代に学んだことだ。
OA機器を必要としそうな業種で、大きく広告を出している会社を狙い撃ちにした。テレアポをかけて訪問約束を取り、足を運ぶ。異業種の経験が思わぬ形で武器になった。


初契約——不動産屋のFAX2台同時販売

初めて契約が取れたのは、いつも通る道沿いにあった小さな不動産屋だった。机が3つほどの小さな事務所だ。

1回目は挨拶だけで引き上げた。
2回目はパンフレットを置いて簡単に説明した。
3回目は社長がいる日を事前に確認してから訪問し、じっくり話した。

「FAXは相手があって初めて生きる。」
1台だけ持っていても相手がなければ意味がない。

近くの不動産屋と同時に入れれば、物件のやり取りが一気に楽になる。

その説明が刺さった。2台同時に売れた。

嬉しかった。
しかし倉庫には横領されて質屋から戻ってきた在庫がまだ眠っている。

これを全部売り切らなければと思うと気が重かった。
FAXなら自分でも工事できる。しかし電話工事を取れなければ技術者は動かない。一人で抱えるしかなかった。


すぐ辞めた仕事——体と魂が拒否したとき

対照的に短命だった仕事が2つある。

ひとつはクリーニング屋だ。
朝暗いうちからボイラーを炊き、ひたすら水洗いをする。

考える余地がなく、明日も明後日も同じ景色しか見えなかった。

先が見えない仕事は体より先に心が折れる。どれだけ頑張っても自分が成長している実感がまるでなかった。

もうひとつは大手生命保険会社だ。
もともと知人の増員を手伝う形で入ったのだが、いざ働いてみると違和感が消えなかった。

生命保険とは人が死んで初めて役に立つ商品だ。それを勧めることに自分の価値観がどうしても馴染めなかった。技術や体力の問題ではなく、魂が拒否していた。

クリーニング屋は「先が見えない」という理由で辞めた。生命保険は「価値観と仕事の本質がぶつかった」という理由で辞めた。どちらも時間の問題で限界が来ることはわかっていた。


69ヶ月続いた理由——続く仕事の3条件

17社を経て、私なりの結論はこうだ。

続く仕事には3つの共通点がある。

1つ目は「誰かに認められている実感があること」
社長の「あなたしかいないのだから」という言葉が私を動かし続けた。

給料でも地位でもなく、一人の人間として必要とされているという実感だ。

2つ目は「先が見えること」
たとえ倉庫の机からのスタートでも、在庫を売り切れば状況が変わる、

技術者たちの信頼を勝ち取れると信じられた。どれだけ苦しくても、この道の先に何かがあると思えることが続ける力になる。

3つ目は「自分の経験が活きること」
広告営業の経験が電話帳作戦に繋がり、FAXの売り方に活きた。
過去の仕事が無駄にならないと感じられる仕事は続く。

逆に続かない仕事は、体だけ動かして頭と心が止まっている仕事か、自分の価値観と仕事の本質がぶつかっている仕事だ。

どちらも早めに見切りをつけることは逃げではなく選択だと今は思っている。


締めくくり

転職を繰り返したことを後悔していない。合わないとわかって辞めることは、その後のより良い仕事への布石だった。

あなたが今の仕事を続けられているとしたら、それはなぜだろうか。誰かに認められているか。

先が見えているか。自分の経験が活きているか。

逆に辞めたいと思っているなら、それは体の問題か、魂の問題か。

17社を渡り歩いた77歳の叩き上げの経験が、その答えを考えるヒントになれば幸いだ。

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